ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.17

Bill Evans

Bill Evansコレクションの最大の難関と思われるレコードが2枚ほどあり、昔から入手が難しくコンプリート・コレクションを諦める人が出ても不思議ではない。それでも1枚は最近ユニオンなどでたまに見かけるようになった配布数200コピーと言われているドイツMPSの2枚組サンプラーレコード。このレコードでしか聞けないBill Evansの未発表演奏が1曲入っているために高価な値段が付けられているが、実際にはそれほど高価な値段では動かない商品でもある。もう1枚は「Camp Fourtune 1974」で ちょっと〜vol.10 のT. Monkと同じでラジオカナダ制作の放送局用レコードで配布のみで終わっているレコード。関係各所の配布で、おそらく世界中でも百コピー以内の僅かな数しかないと思われる。噂には聞いていたが実物にお目にかかったことはなかった。音源自体は後にmonk と共にCan Amレコードから発売されている The Canadian Concert/ Bill Evans (CanAm CA1200)で聞くことが出来る。しかしオリジナル・コレクションにこだわるコレクターは多く血眼になって捜している1枚であり、僕自身店頭では遭遇したことがなく相場はあってないようなもの。
入手経路はオークション。珍しいものが出ているなぁと感心して見ていたら最終入札は他1名だけであっけなく?落札してしまった。(相手の方も欲しがっていたので申し訳ないと思いながら入札)けれどもこんなに珍しいのに入札が2人とは少し驚いた。値段的には仕方がないと言った値段だが、このレコードを放出するコレクターがいるなど思ってもみなかった。肝心のCan Amレコードには縁がなく(ジャケットを見ると購入する気になれない)聞いたことがないが、このラジオカナダ盤自体は悪い音質ではない。また配布用なのでジャケットが無くラジオカナダの共通ジャケットに納められている。

Radio Canada International (RM-224)Bill EvansTrio「Camp Fourtune 1974」Eddie Gomez/ Marty Morrell

Bill Evans 〜Waltz for Debbyに魅せられて〜

「Waltz for Debbyのオリジナルって音揺れありませんか?」とよく聞かれる。「Waltz for Debby」のステレオ盤・RS企画番号のレコードは殆ど偏芯していてSPUなどの重針圧カートリッジだとあまり感じないが、軽針圧のカートリッジで聴くと偏芯を見事に拾い音揺れする。コレが実に気持ち悪い。厳密に言うと「Waltz for Debby」のRS番号は再プレスで、たぶんリバーサイド後期にプレスされたレコードであると思う。スタンパーはオリジナル・スタンパーでオルフェイム盤まで使用されることになる。RS番号はジャケの作りも案外いい加減で裏のライナーはモノラルのライナーを使っているものもある。以前、僕が何も考えずに冒頭の「オリジナル盤」でRS番号の「Waltz for Debby」を出したものだからオリジナルでは無いとのお叱りのメールを頂いた。(特に「Waltz for Debby」で傷があるものは全く価値がないと思っている僕はRLP企画に縁がなく完璧な盤に出会うことは・・・と)お叱りは気になっていたが「Waltz for Debby」のステレオ感が好きで他のものに差し替える気にはなれなかった。最近、RLP企画番号を運良く入手できたがRSのような偏芯は無く、軽針圧カートリッジでも気持ちよく聞くことが出来る。ジャケットの裏写真もつぶれが無く初回印刷であることは間違えない。ところが音質的にはRLPも(偏芯がなければ)RSも同じようなものである。「Waltz for Debby」をもっと快適に聞く選択がある?と言っても信じてもらえるだろうか?

Bill Evans 〜Waltz for Debbyに魅せられて2〜

CDが世の中に出る前、アナログレコード・オンリーの時代にはオーディオ店は実によくアナログを知っていて「音の良いレコード」を視聴用に必ずおいてあった。インパルスの赤黒やプレスティッジの紺ラベル、リバーサイドのオルフェイムなどいわゆるオリジナルスタンパーを使用したレコードを選択していたのは自然の成り行きで最低限の知識はあった。「Waltz for Debby」のオルフェイム盤も置いているお店が案外多く、音質優秀と判断した当時のオーディオ店の耳は本物で、コレクター以上に「良い音」を理解していたものと思う。
「Waltz for Debby」のオリジナルとオルフェイム盤を聞き比べるとオリジナル盤の「ザラッ」とした感じが強い。たぶん材質によるものの影響が大きいのだと思うがオルフェイム盤の滑らかな音質を聞くとスタンパーの劣化を考慮してもエバンスのピアノの音やラファロの甘いベースの質感の表現はこちらの方が一枚上手。もちろんRS企画盤などに見られた偏芯は全くなく安心して演奏を楽しめる。好みにもよるが音質的にはオルフェイム盤で十分。しかも出てくればユニオンなどでは3〜4千円で購入できる美味しいレコードだと思う。
間違ってもらっては困るが、オルフェイム盤が全て良いわけではなく、たまたま「Waltz for Debby」の質感がオルフェイムの材質に微妙に合ったと言うだけで他のリバーサイドの演奏にはやはり聴き比べが必要。
最近ユニオン企画の円盤新世紀の「Waltz for Debby」が6000円という値段が付いているすぐ横で綺麗なオルフェイム盤が3800円で売られていた。中古店の高価な値付けは「良い音での値付け」から別のものの価値への値付けへと変わっているらしい。本当の意味での良い音を聞き分ける人が少なくなったようだ

初期のオルフェイムはオリジナル・ジャケットを使用している場合が多いのでお買い得感がある。最後期のオルフェイムラベルは青緑から青に変わるが海賊版というコレクターもいる。しかしスタンパーはオリジナルで盤質音質とともに全く同じで海賊版とは考えにくい
海賊版といえば「Waltz for Debby」にも海賊版がある。ラベルを見ると一目瞭然。黒テープラベルの下の「BILL GRAUER PRODUCTIONS INC.」の文字が銀色で塗りつぶされている。たしか80年前後に日本のどこかが作らせて輸入したレコードで僕自身購入したことはないが音質的には非常に悪いような話を聞いた。

a Portrait of thelonious / Bud Powell

全盛期のバド・パウエルは・・・という話はよく聞くが、僕はフランスに舞台を移した晩年のバドも大好きで、よくターンテーブルに載る1枚に「a Portrait of thelonious」がある。ちょっと〜vol.11の「Bud in Paris」はフランスvogueがアメリカrepriseから版権を買い取りフランス盤を出したが、マスターはrepriseが所有していてフランスvogue盤はrepriseから送られてきた複製テープを使用したためにアメリカ盤よりも音質が劣ってしまったと考えるが、各国にあるCBSは独自の録音をしていてマスターも録音国で所有されている可能性が高く、愛聴しているUS盤をもっとよい音で聞けるとの期待が大きく長年探しているがなかなか見つからない。イギリス盤はよく見るのに・・・と思いながら探し疲れて忘れた頃にある日、えさ箱にペラジャケの「a Portrait of thelonious」が・・・最初日本盤かと思ったがすぐにフランス盤だと解り飛び上がって喜んだ。その日一日ターンテーブルから降りることはなかったが、音質の方は予想通りアメリカ盤からベールを1枚取り除いたような感じ、しかしアメリカ盤もなかなか優秀な音でCBSの音質管理は立派なものである。この頃の録音はステレオとモノラルの2つのテープを回すという可能性は少なくUS盤のモノラルはステレオのミックス・ダウンと考えて良いと思う。フランス盤はstereo・mono(どちらの針でも聞けますよの意味)と表示されていることからも解るとおりステレオ・テープ録音しか無いと思われる。US盤のモノラルはUS版ステレオよりも音質が優れているわけではなく僅かに劣る。

雑談・モア的jazzA級セレクション?

オーディオ雑誌でのレコード音質評価は数あれど、内容が伴わなければいくら音質が優秀でも面白くない。また入手不可能な廃盤を並べ立ててもまたつまらない。70年以降のそれほど入手困難なレコードではなく、ジャズを楽しめる音質優秀なレコードを3〜50枚並べたら面白いだろうなぁ。といつも考える。このレコードさえあれば、どのようなオーディオ機器でもある程度の音で楽しめると言った具合にジャズと音で楽しむレコード。ただし世の中そんなに甘くなく、もしもそのような企画をHP上で発表したらきっと入手しやすい値段のレコードが値上がりするに決まっている。レコードで商売する人は多いのだ。それは僕の意に反するもので、不用な値上げは極力阻止しなければ・・・と思いつつもHPに紹介してしまう僕は???
そのような「モア的jazzA級セレクション」の中に入るレコードにドイツ・パブロの「Virtuoso / Joe Pass」がある。ソロ・ギターだが素晴らしい録音で、そのアコースティック・ギターの音色は全ての人を魅了するだろう。パブロ録音でも5本の指に入る優秀録音で、ドイツプレス以外では体験できない独特の透明感に包まれている。古いオーディオ機器から最新のオーディオ機器まで再生機器を選ばずにその音質を楽しむことが出来る数少ないレコード。一般中古店ででると千円台で購入できるが、専門店ではその優秀な録音と演奏内容の良さに気づいていて少し高い値段が付いているが、是非聴いてほしい1枚。注意してほしいのは「モア的jazzA級セレクション」はプレス国とプレス時期指定である。それ以外のプレス(たとえば日本盤)などでは音質(品質)保証は出来ない。

さて、話は変わるがSS誌などでは取り上げない輸入盤規制やCCCDの問題がある。音質を追求している日本を代表するオーディオ雑誌がこのことを取り上げなければますます信用はなくなるだろう。ネットでも騒がれているがSS誌が考えている以上に音源の大切さは多くのオーディオファンが気づき始めていると思う。
音源といえば、最近SS誌や管球王国などオーディオ雑誌でアナログ再生を得意としている評論家がジャズのオリジナル盤の解説をするようなった。少し前までは所有しているインパルスのレコードを持ち「これはオリジナル盤らしい」と書いていた評論家だが色々と勉強したようだ。しかし未だに再生カートリッジなどは最新のカートリッジで果たして最新の細い針でオリジナル盤の太いミゾに合うのか?完璧な再生が出来ているのか?疑問が残るが、その評論家がSS誌にデビューしたての部屋の写真には帯付きのジャズレコードが何千枚?も並べてあったので、まぁ進歩しているのだろう。

雑談・〜impulse!のすすめ〜

オリジナル、オリジナルと騒いでいる僕は一般の人から見るとさぞかし変態に見えるだろう。しかし僕の疑問がオーディオから始まっている事は以前に書いたと思うが、「音質、音質」とこだわっているオーディオマニアに限って音源(CD・レコード)自体の音質にはこだわらない人が多く、そう言うマニアの何百万もするオーディオシステムで聞く5、60年代のジャズは何とも言い難い音で、レコードだからCDだから以前の問題に気づかないオーディオ・マニアだらけ。過去何十回と発売されている同じ音源自体聞き比べしようとしない音質にこだわるマニアには呆れるばかりである。しかしバブル期にジャズ廃盤店で作られた値段にも問題が多く、ジャズレコード1枚で高級オーディオが買えてしまうレコードも存在する。幻のレコードなど日本には存在しない時代に値段だけが幻で動いている廃盤店にも問題が多い。

さてこのHPの目的である如何によい音で黄金期のジャズを聴くか?だがオリジナルに準じた音やそれを越えるような再発盤を見つけ安くて、よい音で楽しむ本物の価値を見いだすことである。と偉そうに書いているが僕はオリジナル1枚に大枚出して購入するより、もっと多くの良い音楽をよい音でたくさん聴きたい欲望が強いのかもしれない。さて前置きが長くなったがレコードには流行があり、今は安いが少し前には数倍の値段で取引されていたなど珍しくはない。そこでお勧めするのが最近激安の「impulse!」。大量に輸入されているために人気オリジナルでも万を超えることはなくその殆どが5千円以内で入手でき、うれしいことに再発になると日本盤と変わらない1〜2千円と手頃な値段。しかもこの再発はジャケットは綺麗なオリジナル・コーティングWジャケットでスタンパーは数枚を除いてオリジナル・スタンパー使用していて音質は全くのオリジナルである。この60年代の名演が集まった「impulse!」を集めて聴くことを僕はアナログ初心者にお勧めしている。録音に関しても全盛期とはいかないが、まだまだ若い感性が残っているバンゲルダーの録音を聴くことが出来、安くよい音で(完成されつつあるベテランの)名演奏をたっぷりと楽しめるこのレコードは今が買い時かもしれない。
特に赤黒の再発盤は直輸入盤としても大量に入っているので次から次へと出てくるため、ユニオンでも値を付けられないのだろう。「impulse!」に限って言えば需要、供給の関係が大きく崩れていて、先日「impulse!」を漁っている先輩のコレクターに偶然会い、セカンドハウスで聴くには絶品でこの1年で殆ど番号順で揃ったよ!ユニオンで購入すれば1〜2千円だからね。・・・と、やはり美味しいところをチェックしている人は意外と大勢いるのかもしれない。

インパルスのDJコピー・ラベルはオレンジ色を脱色した白黒ラベル。DJコピー盤は人気ないが音質は良い(オレンジラベルを見慣れていると新鮮かも?)
オレンジ・ラベルは光沢のある艶ありラベルが100番前後まで出ていてそれ以後、艶のないザラ紙ラベルとなる。従って100番以内は同じオレンジでも1st、2ndラベルと分けられて艶のないラベルは再発と同じ価格が付けられていることが多い。

150番台後半あたりから赤黒ラベルがオリジナルとされている。以後、ネオンラベル〜緑ラベルと移り変わる

ROARIN' / Don Rendell

リバーサイド・レコード傍系レーベルのジャズランドにしてはカッコイイ?異色ジャケットだなぁ〜と感じたのが「ROARIN'」。当時イギリス録音だということはライナーを見て知っていたが、US盤がなぜか?オリジナルだと信じていた。ジャケットも格好良く、演奏内容もガチガチのハードバップで音質の良さも手伝って隠れ愛聴盤となる。しかしそこは世間知らずの新人コレクターでベテランに見せると笑いながらオリジナルを見せてあげるよ???と後日持ってきてくれたのがUK盤「ROARIN'」。UK盤もJAZZLANDとは書いてあるが「Produced in England by Interdisc」の文字が・・・よく見るとジャケット写真もUS盤の方が荒い。おそらくリバーサイドが「Interdisc」から版権を買取、それにあわせて「Interdisc」もJAZZLANDとしてUK盤を出したようだ。
音質がまるで違う。ヨーロッパ盤によくあるUS盤の太くて荒々しい楽器の音が影を潜めるという表現はこのレコードに関しては当たっていない。このUK盤はUS盤よりも太いが、決して荒い音ではなく一音一音が緻密なのだ。楽器の一つ一つの輪郭を描くような繊細さが加わりブローする楽器には力強さや勢いがあり、US盤には無かった透明感がスタジオの雰囲気を良く伝えてくれるような音質。後年解ったのだが、UK盤のこの繊細さ透明感はデッカプレスが大きく影響しているようで60〜70年代デッカ工場でプレスされた多くのレコードが優秀録音レコードとして排出されていることからも解るとおり、世界最高水準の技術で音質が管理徹底されていたらしい。一度音を聞いてしまえばやはりオリジナル(UK盤)が欲しくなるが、当時からモノはないし高価で手が出ない。ようやく手に出来たのが十年以上の年月が流れてしまったが(もっとかもしれない)コレクターの世界では当たり前。レコードは所詮コピー物、いずれ手に入るサ。との気楽な考えで集めなければすぐに集めることがイヤになってしまう。何度も書いているが、実際にこのレコードをオーディオマニアに聴かしたらケーブルや電源を換えるだけで音源の音質の差なんかなくなるなどと思う人はいなくなるだろう

Mark Levinson

マークレビンソンと言えば日本では有名なハイエンド・アンプとして知られているがマークレビンソン氏がポール・ブレイ(p)などと共演してECMなどにレコードを残していることは意外と知られていない。レビンソン氏が録音現場に不満を持ち自らミキサーアンプを作りやがてLNPを発表。日本ではオーディオ評論家の熱狂的指示もあり爆発的に売れたが、その世界は何処までも透き通る透明感、危険すぎるほど繊細な空間、独特の冷たい温度感など何を取っても、それまでのアンプ概念を変えてしまい、当時一部の人だけが知り得る世界だった。長期ローンでML-1Lを手に入れた僕もその衝撃は凄いものであり、未だに初期レビンソンの魔力に取り憑かれている1人であろう。そんな僕がレビンソン自身が録音したレコードを見逃すわけは無い。オーディオ店で当時7000円前後で売られていたエルビン・ジョーンズの45回転高音質盤だが、もちろん新品で購入できる余裕はなかった。ところがユニオンで中古盤が千円台でえさ箱にあったので購入し聞いてみるが・・・はて?普通の録音でレビンソン独特の世界に魅せられると信じていたからその落胆は大きかった。すぐに手放してしまったが、最近再び手に入れ改めて聞いてみると所々レビンソンらしさは出てくるが(レビンソンの刻印は入っているのでメタルマスターを直輸入して、日本でプレスしたらしいこのレコードは)やけに日本的な音質なのはどういう理由だろうか?まるでレビンソン氏が日本を意識して録音したような不思議なくらい日本的なハイファイ調の音である。

たまたまフランス盤レビンソン・レコードを手に入れた。レビンソン氏(b)自身が演奏を行っているピアノ・トリオでもちろん45回転盤、上記のエルビン同様、あまり期待はしていなかったがジャケットに魅せられて購入。驚いたことに針を降ろした瞬間レビンソンの世界を感じることが出来た。このレコードには初期レビンソンの妖艶な響きがそのまま録音されていて、まるでLNPそのものの世界だ。こちらの方はマスターテープからフランス国内でカッティングしているようでフランス独特のスタンパーである。両方ともアメリカ盤は出ていないのだろうか?同じレビンソンが録音に関わったレコードの音質がこれだけ違うと是非アメリカ盤を聞いてみたいという欲望に駆られるのは僕がオーディオ・ファンだからだろうか?レコード・ファンだからだろうか?Doug Levinson (p) Mark Levinson (b) Bill Elgart (ds)

雑談 〜オリジナルの価値〜

1枚のレコードが数万〜数十万するオリジナル盤って本当に買う価値があるの?との問いには「ない!」と答えるようにしている。実際最近の良くできたCDなどを聞いてみても(オリジナルとは違う音質だけれど)悪い音質というのは少なくなってきたと言うのがその理由である。高価なオリジナルを聞くよりも一つでも多くの素晴らしい過去の遺産を聞くべきで、それは音質以前の問題である。しかも市場に出回るのはボロボロのオリジナル??(売る方は数十年経ているから仕方がないと言うが)実は綺麗な盤が出回らないだけの話であり、傷の付いたレコードを買ってきても面白くないのは当然、それならば新品CDを買ってきて気持ちよく聞く方が良いに決まっている。

ところが真剣に音質を追求しているオーディオマニアに対しては(例えCDのみの再生のマニアでも)オリジナルを経験すべきと反対のことを言う。ケーブルだけで数十万円買うほどの余裕があるのなら音源に金をかけるべき、または経験するだけで以後のオーディオの調整の仕方、考え方が変わりとても参考になるからだ。ところが音源と言っても最近ではレコード屋に日参している僕でも満足のいく状態のオリジナルレコードは年に数回出会うか出会わないかの世界。レコード自体あまり知らない人がレコード屋に行きオリジナル盤をくださいと言っても状態の良いものが残っているわけはない。実際、黄金期のオリジナルの音質は(経験すると音の固まりが飛び出してくるという表現が一番似合っていると思うが)厚さ、熱さ、密度、勢いにおいて全てが違う。すなわちオーディオ的に全く違う音

他人にオーディオを聞かせる時に全てオリジナル盤で再生する知り合いがいる。聞かれない限りその人はオリジナルとは言わないし、殆どのオーディオマニアはそのレコード音源に対して全く興味を示さないらしい。しかし出てくる音が違うのは当然でオーディオマニアはその良い音、凄い音の原因はプレーヤーやアンプ、スピーカー、又はケーブルにありそうだと考える・・・レコードに入っている音が全く違うのだということに気が付かない。それが日本の90%以上のオーディオマニアである。オーディオ販売店でも同じで確かに最近のCDは綺麗な音で鳴る。しかし本物を知っている人はその音に物足りなさを感じこれがバンゲルダー?という再生音も・・・ところが客も店員も高音質盤が(ソフト的にもハード的にも)最高の音を出していると疑わない・・・さすが良い音!ジャズはやはりコレでなくちゃ!!・・・っと。

音源を知らないオーディオマニア。持っていることが自慢のレコードマニア。どちらも勿体ない聴き方をしている。最高の音でジャズを楽しみたいのならもう一度考え直しても良いのかも知れない

なんとなく手元にあった3大レーベルのtpアルバムを載せてみました

BETHLEHEM RECORDS

ベツレヘム・ズート「down home」のオリジナル盤は昔から中古店に並ぶとたちまち消えてしまうほどの人気だが、ステレオ盤となると何故か人気がない・・・理由は簡単である。音質が全く駄目で一瞬、疑似ステレオ盤を思わせるような音。つまり音像がやたら遠くにあり、エコーが不必要に多くある。これは初期ステレオのマイクのセッティングが不適切でステレオ録音を意識するあまりに遠くに設置したためと思われるが、このような失敗録音も初期ステレオ録音がいかに試行錯誤で行われて、また難しいものであったかという一例であるのかもしれない。しかし恐ろしいもので、この一枚でベツレヘム・レコードのステレオ盤は駄目という意識が入り込みそれ以来ベツレヘムのステレオ盤には手を出していない。
ところが長年捜している「dusty blue / HOWARD McGHEE」はなかなか入手が困難で廃盤専門店を回らない僕にとっては全くと言っていいほど出くわさない。名盤とは唱われないが、このような隠れ名盤は意外と手放す人が少なく、その演奏内容の良さはジャズの楽しさを教えてくれることだろう。あまりにも満足した状態のレコードに出くわさなかったために、とうとう我慢が出来ずにベツレヘム・ステレオ盤に手を出してしまった。ところがこのステレオ盤の音質が驚くほどイイ!!のだ。これには参った感がある。一発目のA面の「dusty blue」から音が飛び出してくる。食べず嫌いとはこのことでベツヘレムでこんなに成功したステレオ録音があるとは・・・しかもレコード(企画)番号は4番違い・・・やはりステレオ初期のレコードは一枚一枚聞き比べないと解らない。同じベツレヘム1枚をとってもこれほど録音が違うと当時のステレオ録音が如何に難しかったか判る。
ステレオ初期に成功したステレオ録音はモノラルよりも音質がよく、録音機器の進歩した現代でもおいそれとは抜けない優秀録音があることも事実である

・・・・・ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.18に続く・・・・・