ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.13

Rudy Van Gelder 1

あれぇ〜?聞き覚えのある音。アーゴ盤の「Here's Love」を最初聴いたときに思った印象だ。アーゴ盤は時としてビックリするくらいの録音のよいレコードがあるがこのレコードもその1枚。ミュージカルを題材にした良い雰囲気のレコードだがE.Jonesのドラムの音が出しゃばりすぎる感がある。しかしよくよく聴いてみるとprestigeの「Over Seas」とそっくりなドラムの音質。それもそのはずで両方ともバンゲルダーが関わっているから当然であるが・・・面白いのは「Over Seas」はバンゲルダーが原音をリマスタリングして作り上げた音で特にE.Jonesのdsの音はメトロノーム盤とはかなり違う。このアーゴ盤はカッティングこそRVGではないがRVGスタジオで録音されたもの。アーゴのカッティングエンジニアが忠実にテープの音を再現したと思われるがRVGがカッティングしてもそんなに変わらないような気がするほどRVGの音である。当時バンゲルダーがどのような感性で音を作っていたかよく判る例だと思う。
絶頂期のバンゲルダーがブルーノートに残した音はライオンの音。本当の彼の音はプレスティッジにあると言われているがこのE.Jonesを聞くたびに納得してしまう。5,60年代のジャズを魅力的に聞かせて神様と言われる絶頂期のバンゲルダー・マジックに欠点はないのだろうか? ※ARGOはDJコピー盤

Rudy Van Gelder 2

往年のジャズファンから見るとやはりバンゲルダーは神様的存在である。ロリンズやマイルス、コルトレーンなど多くの一流ミュージシャンの魅力をレコードという媒体を使い世界中に浸透させた貢献度は計り知れないほど大きいと思う。その音響的魅力は芸術の域まで達しているのでは・・・というのは誉めすぎだろうか?
そんなバンゲルダーにも不満がある。それはハープの音で、初めてドロシー・アシュビーの「HIP HARP」を聞いたとき僕が思うハープの音とはかなり感じが違い違和感を覚えた。まるで繊細さが無くハープを太い男の指で弾いたらこんな音になるのでは?と言うような音で僕の大きな不満となる。彼女の演奏にはNew Jazzに「IN A MINOR GROOVE」という名演奏がある。ハープの音質は「HIP HARP」に比べ格段によくなっていて女性らしさが表現されているが僕にはそれでもまだ多少不満で大変残念に思う。
ジャズにおけるハープの音の不満を払拭してくれたのはアーゴの「dorothy ashby」。(このレコードでバンゲルダーの音にも表現できないものがあるのを知った。)それは女性らしい繊細さと優しさをうまく表現している音で僕が想像していたハープの音そのものである。バンゲルダーで唯一不満を挙げるなら繊細さであろう。しかしジャズ録音における豪快さと繊細さを同時に表現できるのは並大抵の感性では出来ないと思う。

ARGOのステレオ盤にはビックリするほどよい録音があり、これもその1枚。後日ARGOのステレオ盤とモノラル盤の音質について書いてみたい

Rudy Van Gelder 3

さて、モノラル期のバンゲルダーの絶頂期を名録音とされるサキソフォン・コロッサスなど多く排出した56〜7年前後とするとステレオ期の絶頂期はいつ頃になるのであろうか?(読まれた方も多いと思うが)面白いことに先月発売されたSS誌(148号)のp558に書いてあることとほぼ同意見である。インパルス時代初期〜中期のバンゲルダーの録音はステレオ録音でも中域が薄くならずモノラル時代と異なる凄味がありコルトレーンを中心としたライブ録音などの迫力はモノラル時代のそれを凌ぐものだと思う。コレクターになるとモノラルが重宝されるがインパルス時代の録音はモノラルで聞くのは大変にもったいないとも思う。特にオレンジラベル(1〜153番前後)と言われているIMPULSEには名演奏も数多く、ステレオ録音としての評価はブルーノート、プレスティッジのモノラル録音に匹敵する評価があって良いと思う。

しかし残念なことにインパルス以降のバンゲルダーの録音は急激に精細が無くなる。彼の録音技術がモノラル的なステレオから、よりワイドレンジな音場感を求めたためだろうか?それとも彼の音に対する感性が変わったのか?僕には想像しかできないが・・・

IMPULSEの「ブルースの真実」は通称カーテンと呼ばれているがコレクターの間ではロボットと呼ばれている。見開きの中の写真が何故かロボット?みたいな造形物が写っているためだ。評判が悪かったためかすぐにオリバー・ネルソンの顔(再発ジャケット)に変わってしまったが・・・60年代およびインパルスの代表作の一つで優秀録音

TEST PRESSING

最終的な音質や物理的な欠陥の有無を判断するために最初にプレスされたテストプレスレコード。希に中古レコード店で見かけるが人気がない。当たり前でジャケなし、白ラベルでは誰も買わない。したがってタダみたいな値段で購入することができるようだ。しかし、このテストプレスが面白い。理由は2点あり1点はラベルにメモ書きくらいしか残されていないので演奏者をレコード会社、マトリックスナンバー、演奏内容から調べる時間が楽しい。もう1点はマザースタンパーに何かの不都合が見つかったら廃棄される可能性があり製品版のスタンパーと違う可能性も出てくる。当然、音質も少し変わってくるはずである

さてさて最近2枚のテストプレスを入手したが時間が無く全く調べていない。1枚は音質の良さで評価が高い「エバンスのパリ・コンサートVol.1 ?」(現在手元に資料およびレコードが無いので確認できない)で聞いてみるとさすがにエバンスのピアノの質感はよいが(たぶん同じだと思うが)オリジナルスタンパーとまだ比べていない。
もう一枚は僕が聞いた限りリー・コニッツであると思う。CBSのテストレコードで記載が何もないが内袋に溝の欠陥の写真が付いていた。もしかするとこのレコードのスタンパーが破棄された可能性が高いと思うがこちらも調べる時間がないので・・・(もしも廃棄されていたら・・・ラッキーである)

左写真がエバンスのテストレコード。左下がコニッツ?のテストレコード。右下は溝の欠陥写真だが音飛び及び音揺れはない

ヒストリック・パフォーマンス

ドルフィーで一番好きなレコードはデンマーク・デビューの「ドルフィー・イン・ヨーロッパ」であるのにドルフィーで一番聞く機会が多いレコードは?「ヒストリック・パフォーマンスの赤」と答える私は?ちょっとひねくれているかもしれないが素直に答えるとこうなってしまう。
コルトレーン名義のヒストリック・パフォーマンスのレコードは5枚出ていて、それぞれ(白、赤、緑、黄、橙)と色のみで分けられているが赤、白は「Eric Dolphy Quintet Featuring John Coltrane」としている。特に赤のドルフィーは絶品で、タイトルの理由がよく判るはずだ。何度も聞くために複数枚所有している大切なレコードの1枚である。

このヒストリック・パフォーマンスはスウェーデンで発売された5枚の海賊盤であり音質も(海賊版の中では)まぁまぁの音質。コルトレーンの貴重な音源としてジャズ通の中では昔から有名であり十数年前は入手が困難なレコードでもあった。このレコードの音質がもう少し良く、正規で発売されたレコードならば名盤として常にジャズ雑誌の「名盤?選」に載る1枚になったであろうが、希にしか紹介されないのは残念だ。

十年くらい前に再発され、輸入盤というふれこみだったがスタンパーにJISマークがあり怒った人もいたようだ。このような海賊盤にもオリジナルと再発があるから笑える。少なくとも3回はプレスされているみたいでオリジナル盤はカバーが少し厚めでラベルと同じ色のノッペラボウのジャケットでラベルにも溝がある。次に再入荷したときにはカバーが薄くなりラベルの溝が無くなり、日本で付けたらしい小さめのコピーに曲名が書いてある紙が貼り付けてある。その後の日本で発売された再発盤は先に書いたようにJISマークがあるはずだが私自身は興味が無く所有したことがないので未確認。このレコードに関してはオリジナル、再発の音質の差は元が元だけに意味がないと思うがそれはコレクター、どうしてもオリジナル盤を所有したがる私は病気であろうか?

上は再発ジャケット、オリジナルとは色合いが少し異なる。(オリジナルはノッペラボウのジャケットで面白味に欠けるのであえて再発のジャケットを載せました。)

白:ERIC DOLPHY QUINTET (HPLP-1)
緑:BLUE TRAIN VOL.1 / JOHN COLTRANE 4 (HPLP-2)
黄:BLUE TRAIN VOL.2 / JOHN COLTRANE 4 (HPLP-3)
赤:ERIC DOLPHY QUINTET VOL.2 (HPLP-5)
橙:BLUE TRAIN 1963/ JOHN COLTRANE 4 (HPLP-6)

J'sポップスの巨人たち(雑談です)

皆さん、ご存じの方も多いと思いますが最近コンビニで8cmCD付きのお菓子が売っています。懐かしいCDが入っていて思わず購入してしまいました。「J'sポップスの巨人たち」という商品で正にオジサンを狙った企画。全9種類でちょうど我々オジサンが青春を過ごしていた時期のフォーク・ニューミュージックを集めていてモノラル・ラジカセ(当時としては高級品?)で聞いていた懐かしい時間を思い出しました。
さて、その音質ですが70年代の歌謡曲って不思議と各社同じ音質で、独特な音がすると思いませんか?とてもハイファイとは言えないけれど最近の録音では絶対に聞けない音ではあるようです。必要以上にエコーがかかっていてボーカルなどはスタジオに備え付けられているマイクをそのまま使っているような皆統一された音で外国の録音のように各社のポリシーがあるようには聞こえません。全てに於いて60点主義?だと思います。その歌謡曲の独特の音をハイファイにしたのが80年前半からで特にソニーの松田聖子の録音はかなり優秀で当時ずいぶん騒がれたように記憶しています
しかし懐かしいCDを聴いているとその時代の思い出がいっぱい詰まっていてラジカセで一生懸命聞いていたラジオやテープなどの音は今よりも良く聞こえていたような気がします。やはり音楽がありオーディオがある。僕はオーディオマニアではなさそうです?
17才は森高千里も良いけれど聞いてみるとやはり南沙織でしょう。また花嫁のB面は僕の学校のテーマソングになっていた風です。このお菓子の(オジサン)企画が終わらずに色々な懐かしい曲が出ると楽しいと思っているのは僕だけでしょうが・・・

当時のシングルのジャケットも復刻されていますが紙質と印刷が悪いのが残念

超ステレオ音響!!ピアノ名手の競演!!

雑誌の付録のソノシート。このソノシートは実験的な録音でそのテーマは「音が単に左右に動いたり漠然とした臨場感で満足する時代は過ぎステレオの意味は音質が絶対によいこと」という理由で上の表題が付けられていて超ステレオ音響という表題はなかなかインパクトがある。
ステレオが普及し始めた日本でのステレオにおける考え方がよく判る1枚でオーディオ的に非常に面白く聞こえた。現在のステレオ装置で聞くとなんて大げさな音場感!とてつもなく大きなホールにいっぱいにひろがって演奏している音場といったらよいのだろうか。悪く言うと一時外国で流行った疑似ステレオそのものである。まだまだ日本ではステレオ録音は未熟だったのか?と考えるが、この安価なソノシートを聞くのは当時電蓄のようなステレオで聞いていた一般人。そのような人たちを驚かすのならこの超ステレオという大げさな音場感は普通の人にとってはカルチャーショックとなるはずだ。レコードと違い対象となるのはステレオも何か分からない大衆で、このようなソノシートなどの普及がやがて80年代のオーディオブームに繋がったとも想像する

レコードはどのような人がどのような装置で聞くのか?というのがその時代その時代のエンジニアたちが考えて音づくりをしているはずで、そのレコードが作られた時期の背景を考えながら機器を選ぶのもオーディオの楽しみかもしれない
この雑誌、油井正一さんの解説も面白くプレーヤーの写真もなかなかのものである。解説には一曲一曲、曲の説明と演奏配置図が記載されており本を読みながら家族で聞く姿がなんだか少年期の時代に重なり合って懐かしい。このようなジャズのソノシートは数知れないほど出ている

ORIGINAL JAZZ CLASSICS SAMPLER

新宿のヴァージン・レコードが撤退するらしいと見に行ったら本当で閉店セールを行っていた。1枚で30%、3枚で40%5枚で50%と格安で在庫を売りさばいていて輸入盤中心に来年(2004)1月に閉店するまでのセールらしい。半額だと今まで買い控えていたCDが1枚1100〜1300円。僕もクルマで聞くちょうどよいCDをと捜したらOJC(オリジナル・ジャズ・クラシック)のサンプラーCDを見つけ購入してしまった。このCD、日本人的な選曲でないのがよい。日本のオムニバス盤の選曲と僅かに路線がずれていて,かえって新鮮に聞こえる。これまでレンタル屋で借りてきたオムニバス盤はどれもこれも似たような選曲で面白くも何ともない。『そば屋の出前持ちまでがモ〜ニン・・』状態である
しかしこのサンプルCD、昔OJCを何枚か買うと貰えたCDのような気がするが・・・記憶間違えであろうか?
このようなオムニバスCDはセールでないととても買えないものであり、必要が無くなって売ろうとしても引き取ってくれる中古屋はおそらく無いであろう。音質は?ちょっとハイ上がりで細身の音でありこの点ではOJCのLPの方が多少なりとも良いように思う。しかしクルマで聞き流すにはもってこいのCDで日本選曲の名曲を聞き飽きた人には良いと思う

話は変わるがレコード袋の中に入っていたチラシには全国のヴァージン・レコードが同時に撤退するようで、現在の日本ではCD販売の商売がよほど難しいのであろう。売上げ不振はコピーやレンタルが原因だとメーカーは言うが、買う側から言うと購入したいアーティスト、CDが無いからが一番の理由だと思う。現在のJ-POPのような音楽のコンビニ状態ではとてもCDを買う気にはなれないだろう。ましてCCCDなど論外で僕の周りではCCCDだから購入する気になれない(どうせ音が悪いのだからコピー?でイイや←デジタルコピーできるらしい)という若い人たち(会社のアルバイトなど)がたくさんいる。こんな時代、レコード会社もCDメディアに拘らずに他の方法で音楽配給する頭の切り替えが大事であると思う

ARCHIE SHEPP

Vol.12で出てきたアーチー・シェップのピアノトリオ(78年録音)のレコードが出てきた。前回の時はレコードが見つからずにジャケット写真が載せられなかったが先日段ボールの中から出てきて機会があれば写真を載せようと思っていた。昨日購入した手ブレ補正のレンズは三脚いらずで写真撮影の負担がかなり減り、少し気持ちが楽になった。三脚使用のように写真がビシッとは決まらないが縮小していると殆どわからないと思う。DOODLINよりも録音は新しくなり現代的で同じフランス録音だが10年の録音差はかなりピアノの音が新鮮に聞こえる。デジタル技術が出始める直前でアナログでの録音機器、録音技術が相当研究されていたように思われる。しかし以降録音機がデジタルに移行されるようになるとその質感が少し変わりレコードからCDに変わるとさらに違和感が残るように感じるのは僕だけかもしれないが・・・それに合わせた機器の選択がそろそろ必要かもしれない

*Vol.12で80年代録音と書きましたが78年録音の間違えでした。

・・・・・ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.14に続く・・・・・