ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.12

Sheila Jordan

シーラ・ジョーダンは不思議な世界を描き出す魔術師みたいなものと思ったのは初めてブルーノートでこのシーラを聞いたときのこと。一人こっそりと深夜に聴くと何か触れては行けない大人の世界があるような気がしてならなかった。昔のことだが現在でもこの魅力(魔力?)は変わらない。普通ヴォーカルを聴く判断基準は声が好き嫌い?顔が好み?の世界だが(声は決して好きな声ではない)シーラだけはうまく言えないが人を引き込むような・・・不思議な感覚だ。
デビュー録音の「Looking Out」では、さすがに当時、既にベテランらしく独特の彼女の世界が出来上がっているが、初録音のためか声の緊張感が抜けず闇の中に引きずり込まれるような魅力が薄い。しかしブルーノート「PORTRAIT OF SHEILA」では彼女独特の世界を歌い上げ、シーラの名盤中の名盤になっている。

さてシーラ、デビュー盤の「Looking Out」のA面ではピーター・インドのベースが強調されすぎて何かミンガス・レコードを聴いてような感じだがベースの質感は悪くないし全体としてもなかなかの録音である。しかし残念なことにシーラ・ジョーダンが歌っている「Yesterdays」の録音だけが悪い。「Looking Out」再発のWAVE盤では話が違ってきて、全体の締まりが甘くなり一枚ベールを被せたみたいな音質。とくにベースがボンボン被るので聞き難いかもしれない。英・再発盤と英・初版プレスとの音質がかなり違う1枚である

もう1枚、日本のソニーで企画したシーラの作品はデビューとは逆にあまりにも伸び伸びと歌っているせいか残念なことにシーラ独特の世界が薄れている。もう少し緊張感があれば素晴らしいのに・・・しかしこのシリーズのジャケットは素晴らしく全て集めようとした時期もあった

「PORTRAIT OF SHEILA」シーラの傑作中の傑作でジャズボーカル全体でも最高のレコードに入ると思う

英・初版プレス(Esquire)と英・再発(Wave)ではかなり音質が異なる

このシリーズのジャケットは全て魅力的

OUR MAN IN PARIS / DEXTER GORDON

昔、大好きなデクスターの「OUR MAN IN PARIS」を手に入れたときの喜びは大きかった。それまで聞いていた日本盤はなんて薄っぺらい音なのだろうと驚いたものだ。当時、僕が所有している自慢のオリジナル盤?レコードだったが友人が持っていた両ミゾ有り「OUR MAN IN PARIS」は僕の持っている(自慢)盤とは音質の新鮮度が違って衝撃を受けた。当時まだ耳マークの存在など話題にならなかった時代だから、ただ単にミゾ無し盤よりも厚く重量があるためだと思っていた。そんな中でキング重量盤が内袋まで再現した形で登場した。これ以降重量盤が宣伝文句になったような気がする。音質もそれほど悪くはなかったがそれでもサックスが日本的な音?で厚みなどの微妙な表現に不満があった。カネのない時代だったから当時、ミゾ無しが5、6千円で買えた時代、ミゾありが倍の値段は非常に厳しかったが思い切って購入!たぶんカートリッジやトランスを高級品に換えても思った通りのデクスターの音にはならなかっただろうと思う。ソフトばかりでもハードばかりでもダメで両方とも絶妙に釣り合いがとれていないと思った通りの表現にならないと最近これらのレコードを聞き直して確かめている。しかしこのレコード、ステレオ盤でミゾ有りはあるのかなぁ?レコードは分からないことだらけだ

モノラル盤もステレオ盤も耳マークが付いているものを所有しているがこのレコードに関してはモノラル盤の方が音質的に優れているようだ。モノラルのミゾ無し盤は耳マークが付いていないものが多く、音質的にも少しレンジが狭くなり、厚みなどにちょっと不満が出るが聞き比べないと分からない範囲

時間がないので条件が違うところで写真を撮ったらずいぶんとジャケットの色が違うように写った。本物の色は上と下の中間くらいかな?

JOHNNY GRIFFIN 2

先述したJ.GriffinのMuza盤であるがこちらのラベルには2種類ありオリジナル盤とされる黒ラベルと再発盤とされる青ラベルがある。しかしmuza盤10インチ盤は青ラベルであることから一部の人は、この『J.Griffin』も青ラベルがオリジナルだとする人もいた。両方とも盤面はフラットディスクで盤重量も殆ど同じで質からみてごく短い期間にラベルが変わったように思えるが果たしてどちらが本物か?ところがスタンパーを見ると一目瞭然!A面を比べると黒ラベルが手書きでXW385 M.Y(?)と刻印されているが青ラベルはXW385-2 M.Aと刻印してあり明らかに再発盤、しかしB面は両方とも同じ刻印のXW386 M.Y(?)である。音質の差の方はA面が音質が少し違う。特にベースの締まり方がまるで違う。
このような細かいところに目を付けるのがコレクター。再発だと相手にされないのでオリジナル盤の数分の一で購入できる場合が多いので、青でもB面は音質が変わらないし、A面も音質が激変するわけではないので安かったら購入をお勧めしたい名盤である。【注:Y(?)←筆記体のYのような文字で判読不明】
市場には黒よりも青の方が出やすい。しかも綺麗な場合が多い。ここでいつも考えるのだがキズのある音質の良いオリジナルか?音質は少し落ちるがキズのない再発か?である。私の場合3、4千円くらいの値段だったらキズのない再発を購入する。そして綺麗なオリジナル盤が出るまでじっくり待つ。最近待つのも楽しみの一つと考えている。

最近、このmuzaのグリフィンまでCD復刻されたようで音質はどうか?興味がある。オリジナル音源も優秀とまではいかないがこのレコードで聴くグリフィンのサックスの音色はなかなかのものである

savoy

さてさて、このHPの基本姿勢に戻るとオーディオ・マニアはケーブル1本、コンセント、プラグの音質の差にはあんなに敏感かつ神経質なのにどうして音源の音質の差を重視しないのだろう?レコードを少し研究すれば高価なオリジナル盤でなくとも安価な再発盤でオリジナルとほぼ同じ音質を手に入れられることが多いことが分かるこの2点である。
皆さんに5、60年代のジャズの名盤をより素晴らしい音でその熱さを感じて欲しく、またアナログでしか感じられない当時の音を体感してアナログレコードにもまだまだ魅力がいっぱい詰まっていることを知って欲しいと思ってHPを書き始めた

特に2番は何度も書いているので理解していただける方もいると思うが現在その最右翼のレーベルsavoyについて果たして音質の差はどのくらい?あるのか人気盤で確かめてみた。最近ネット販売のレコード屋で恐ろしいほどの高価な価格にて取り引きされた「Introducing LEE MORGAN」である。オリジナルはあまり見かけないが(savoy自体あまり高価で取り引きされない)こんな値段でも欲しがる人がいるんだと感心させられた。でも不思議なことに2ndだと高くても4〜5千円止まり。実際音質に値段の差があるのか比べてみた。
オリジナル・ジャケットはいわゆる「巻き」と呼ばれている表の写真が裏まで巻き込まれているものでコーティングも施されている。2ndジャケットは「貼り」と言われる写真を貼ったものでコーティングもなく色も薄く安っぽい作りである。盤はオリジナルは赤ラベルのミゾ有り、2ndはえび茶ラベルのミゾ無し、オリジナルの方が少し重く、硬いが共にフラットディスクではない。スタンパーは全く同じだが面白いことに2ndは「×20」と「A」という文字が欠落している。その他の手書き「RVG」の自体や位置などは全く同じである。
肝心の音質は?全くと言っていいほど再発盤でも不満を感じない。特に初期のモーガンのパリパリとした音には勢いがありある種の爽快感を味わえる。何度もそれ以外の再発を聞いているが「RVG」の刻印のあるレコード以外でこの爽快感を味わったことがない。普段CDで楽しんでいる人もこのレコードでモーガンを経験してみて艶やかなパリッとしたモーガンを知って欲しい1枚だ

話は飛んでしまったがsavoyの一連のシリーズの多くは再発盤もオリジナルスタンパーを使い音質的にはほぼオリジナルでしかも一部を除いて日本盤よりも安く手に入るので「RVG」を捜して聴いてみてください(注)オリジナルでも「RVG」がないものや2ndで手書き「RVG」から機械文字「RVG」になっているモノも有るので注意

DOODLIN/ARCHIE SHEPP

フランスのレコード会社「Carson」をご存じだろうか?フリージャズではけっこう有名なレコード会社でアート・アンサンブル・オブ・シカゴの代表作「チコンゴ」がこのレコード会社から出ていると言われているが未だに現物を見たことがない。この「Carson」からもう一枚、幻のレコードが出ている。当時の演奏からは信じられないくらいアーチー・シェップが全曲ピアノを弾いていて素晴らしく味のあるモダンピアノを聴かせてくれる「Doodlin」である。録音年月日は不明だが60年後半〜70年前半だと思う。スタジオ録音だがプライベートに近いものかもしれない
日本ではテイチクから出ていてピアノを弾くシェップのレコードの存在は早くから知られている。しかしコレまたオリジナルとされる「Carson」盤は幻である。70年代ユニオンでこのシェップの輸入盤を見たコレクターがいて(本人は買うべきだったと後悔していた)ジャケットも日本盤と同じだったという話である。となると日本で所有している人がいるはずである。一度でイイから見てみたい。80年代にも他のレーベルからシェップがピアノを弾いているレコードが出ているがどちらかというと「Carson」盤のほうが好きである

SALENA JONES/Alone & Together

日本で人気があるサリナ・ジョーンズ、彼女のデビューアルバムは今でも良く聴くレコードで、昔は一時オーディオで音決めに使っていた事があった。しかしひょんな事からこのオリジナルを手にして、ボーカルほどオリジナルと(それ以外の)再発レコードの音質が異なるものはないと気づいたのはレコードコレクターになり始めた頃のことである。それ以来音源に気を遣い、音源(元)が悪いと幾ら素晴らしい機器で音源(元)を増幅してもよい音では再生できない事を知ることになる。例えば同じ音源のカセットとCDを何百万もする装置で聴くとすればあなたはどちらの音源を選択しますか?と言うのに似ている。
さて、サリナ・ジョーンズの「Alone & Together」だがオリジナルはイギリス盤である。ヒットしてイギリスでも発売枚数が多く最近都内ユニオンなどでも2千円以内で数回見ている。さらに日本盤になると400円以下で売れ残っている。内容はオーディオ的にもジャズ(ポピュラー)的にも満足するほどの出来で有名すぎて説明はいらないと思う。しかし音質からみるとサリナの声の差は大きく日本盤はAMラジオのように中域が薄くなり高域ばかり目立つ作りとなっている。オリジナルと比較すると、とても高級オーディオで再生したいとは思わない。音源のことを気遣っていれば、このわずかな値段の差が大きくオーディオ再生の音質差になって現れる。
オーディオ機器はショップで聴くのと自宅で聴くのとでは全然違うのを知っている人は多い。オリジナル・レコードも同じで喫茶店や調整されていないオーディオ公聴会などで比較して全然変わらないと言っているオーディオマニアがよくいる。しかしそう言う人に限って高音質盤という企画商品を鵜呑みにして真剣に音源(元)について考えた人が少なく、オーディオ機器の音が気に入らないと言って頻繁に買い直す人が多いと思うのは気のせいかな?
(注)このレコードはたびたび日本で再販されるがそれぞれ音質が微妙に異なる

JACQUELINE DU PRE

今週はジャズではないけどお付き合い下さい。ロック少年だった僕をジャズに引きずり込んだ強烈なものはなかったのかもしれない。オーディオ好きだった僕はアコースティックな楽器の方が魅力的に感じていた頃にジャズに出会い、自然とベースの音やドラムの音に誘い込まれたように思う。しかしクラシック音楽のクの字も知らない僕にとってデュ・プレとの出会いは強烈であった。クラシック音楽が何にも判らない僕にも痛烈にその悲壮(悲痛)さが伝わってきて、普段優雅に聞こえているクラシックがデュ・プレだけは優雅さと悲壮さがミックスされた独特の世界を聴かせてくれて心に強く響く。特に夕方や深夜に聴くデュ・プレは部屋の雰囲気を一変するが、自分が鬱の時にはこれほど辛い音楽もないと思う。引越の際、100枚ほどレコードを持っていくつもりだが、下の4枚だけはジャズに混じって側に置いておく大好きなレコードである。クラシックを意識してからオーディオの見方も変わってきた。面白いことに同じシステムでクラシックが鳴り始めるとジャズもよりよく鳴り始めるのだ。
iPod(アップルのmp3プレーヤー)のためにデュ・プレの2枚組のCDを購入した。うまく言えないが圧倒的にアナログディスクのデュ・プレが好きである。というかCDでは表現できない何かがあるように感じられる(CDではその表現が平面的に聞こえてしまうのは何故だろう?)

長年憧れていたレコードで手に入ったときには一晩中ジャケットを見ていたデュ・プレでも入手困難なレコードの1枚。EMIのデュ・プレの中では音質的に抜群。映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ 」が公開されてからデュ・プレのレコードは入手困難になったと言うが嘘でその前から入手が難しい

僕の愛聴盤で初めてデュ・プレを聴いた盤でもある。音質的にはそれほど優秀でもないが少し優しい音が音楽に合っていてなかなか良い。予備に再発盤の切手ニッパーも所有しているがオリジナルとさほど変わらない音であるのはさすが大手EMIである

デュ・プレのなかでは比較的入手しやすいレコードで年に何回か中古レコード屋でお目にかかる

日本で輸入されたときに版権の関係でトレードマークによくシールが貼られていた。このレコードも見事にニッパーくんが隠されエンジェル・マークに変わっている。

最近思うこと

オリジナルと再発盤。コレクターの間では例え音が変わらなくても「なんだ、再発か」と言って相手にしない?バカな習慣がある。しかし音だけでいうとスタンパーさえ同じであればオリジナル盤との音質差は殆どないと言えるだろう。しかも一番よいのはオリジナル盤の数分の一で購入でき、しかも盤質が良いものが多い。以上のことから僕は音のよい再発盤をオーディオ・マニア?に勧めている。
しかし最近ユニオンなどの廃盤を扱っているレコード店やヤフオクなどで2ndがオリジナル盤と同じ価格で表示されていることが多くなってきた。ユニオンなどでは担当者の知識不足が原因であろうがヤフオクでは意識的にオリジナルと称している場合が見受けられる。実際、最近ある中古レコード屋で再発盤がオリジナルと同等の値段が付いて壁に飾られていて、しかも数日後になくなってしまった。僕としては何故か心苦しくなる。ブルーノートなどのメジャーなものは再発盤かどうかすぐに判る人が多いが、少しマイナーになると判断が付かずにオリジナルと信じて購入するのだろう。十分に注意して頂きたい
最近見た2例を挙げると・・・

人気盤CLIFFORD JORDAN IN THE WORLD は白ラベルがオリジナルであるが2ndラベルの白黒ラベルがオリジナルの価格で壁に飾られていた。しかし数日後には無くなってしまった。版権の関係か?いまだにCDで復刻されていないため強気の値段設定をしていた可能性もあるが・・・

二つ目はdebut、レコード盤はオリジナルだがジャケットだけがセカンド。こういうことが意外と多い。オリジナル・ジャケットはいわゆる「巻き」で2ndジャケットは「貼り」(前記のsavoy参照)、価格はそれだけでずいぶん差があるが、売っている方も気づかずにオリジナル盤としている場合が多い。savoyなども盤はオリジナル、ジャケットは2ndというものが多いので注意。(上の写真はオリジナル)

・・・・・ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.13に続く・・・・・