ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.11

Charlie Parker(言いたい放題言わせていただければ・・・)

オーディオ・ファンでジャズ好きな人に聞くとチャーリー・パーカーは演奏内容以前に音質が悪く、聞くに堪えないらしい。しかし、その人たちは本当によい音のパーカーの演奏を聴く機会がないだけだと思う。オーディオ・ケーブルの一本には針の穴を見つけるくらい音質に対して神経が細かいのに、レコードやCDなどの音源には無関心で疑うことを知らない人が多すぎる。例えばSP盤のパーカーの音を聴いて、その指使いまで解る音にビックリする経験をしたら、きっと音源に対して新たに考えると思うが・・・そういう経験をする人が極端にオーディオ・ファンでは少ないのではないか?と思う。

オーディオ雑誌でアナログの魅力を語るオーディオ評論家?の再生音源(ジャズレコード)の殆どが日本盤か再発輸入盤。最高の音でなっているとは思えないし、オリジナル音源をあまり聞いたことがないのではという発言も?つまり音源に対し関心がないようだ。オリジナルが全て良いとは思わないが、少なくともプロの評論家ならオーディオ再生機器ばかりでなく、音源に対しても研究すべきだと思う

僕はSP再生はやらないが、いい音でパーカーを聞きたいという気持ちは強い、となればサヴォイ、ダイアル、マーキュリーなどの10インチや12インチということになる。SPほどの生々しさはないが質の高いパーカーの音に出会うことが出来、再発盤やCDで何度も聞いているパーカーがまるで違う音楽のように聞こえるのは経験しないとわからないと思う。

パーカーなどの古い録音に関してはオリジナル盤(たぶん中級ケーブル1本分くらいの値段が付くレコードもあるが)との差は大きく、音質の変わり方はケーブル1本の差どころではなくどんな高級ケーブルを持ってきてもこの差は縮まらないだろう

CDなどで古い音源をリマスタリングして、これまで以上に質の高い音質だとよく宣伝文句で書かれているが、神奈川の有名な大先輩コレクターであるvinvan氏が掲示板に書いてくれた言葉が好きだ『オリジナルを越えた音質ではなく、オリジナルを変えた音質!』

*注:日本盤や再発輸入盤の音質が悪いというのではなく、オーディオ・ファンが本当によい音を求めるのなら(例えばブルーノートのキングや東芝でも明らかに音質の差があるように)音源に対してもっと関心を持つべきだと思う

パーカーのダイアルの12インチはジャズLPの中でもっとも重量があるのではないのかと思う。ブルーノートのレキシントンの重量など問題にならず片手で持っていると手首にかなり負担がかかるほどの重さである。この重さは最近の重量盤が軽く思えるほどだ。レコード自体細かくいえばダイアルの12インチのジャケットは2種類あり、グレー・ジャケットに赤いシールが貼ってるものが最初といわれていて、またレーベルも黄色にエンジでDIALと書いてあるSPと同じデザインのものと下の写真と2種ある。どちらにしても現在、貴重な音源であることは間違いない

このレコードで聴く中域が太く、少し暖かみのあるパーカーのサックスの音色が素晴らしい。これは別次元の音である

joao gilberto

僕の周りでボサノバに詳しい人がいなかったのでボサノバに対する知識が殆どなくジャズのようにオリジナル盤にはそれほど執着しなかった。しかしジョアンのブラジル・オリジナル盤がどのような盤か解らなかったが、爽やかな風が吹き抜けるようなジョアンの歌声を求めてレコードを捜すとやはり僕的にはオリジナル盤に近いレコード?を購入してきたような気がする。知識がないくせに何枚も同じレコードを買って気づいたことは新しいプレスほどジョアンの声に柔らかさがなくなり、一番美味しい中域の部分がなくなっているように感じることが多くなった

レコードは(特にボーカルは面白いもので)再発されるたびに音質が違う。楽器と違い、声だとその音質の差がハッキリと解るのは何故だろう?医学的なことは判らないが、人間の耳は人の声に非常に敏感だと気づいたのは愚妻が幼稚園できちんと子供の声を聞き分けることに驚いたときである。僕が経験したボーカル・レコードは時間がたつほど(プレスが新しくなるほど)一番美味しい部分が抜けて、ひどいときには高域と低域だけの声になることが不満でなるべくボーカルはオリジナル盤を求めるようにしている

たぶん、上のラベルがオリジナル盤もしくはオリジナル近いプレスだと思う。下のプレスの方が聞きやすいが上のレコードと聞き比べると明らかに中域が抜けている。ジャケットの作りは同じようなもので両方とも最初からビニールで覆われている。プレス時期はそれほど離れていないと感じるが・・・音質の差は激しい

No Sun in Venice / M.J.Q.

フランス映画『大運河』のサウンドトラック盤でMJQの代表作の一つに数えられる名盤レコード。もちろんフランス・ベルサイユ盤がオリジナルで、よく見かけるジャケットの米・アトランティック盤は再発盤と認識されている場合が多い。以前、冒頭でMJQの米・アトランティック盤の『フォンテッサ』よりもフランス・ベルサイユ盤が非常によい音ということを書いた。面白いことに今度は再発盤と認識されている米・アトランティック盤がフランス・オリジナル盤よりも音質が良いのだ。
オリジナル・ベルサイユ盤これはこれで立派な音質だが、米アトランティック盤の音質はオーディオ的に驚くような音でカッティングされている。当時のアトランティックのレコードはなぜか音量が低く、サーフィス・ノイズから音が離れない感じの物が多いがこのレコードに関してはオリジナル盤より輪郭がハッキリしていて締まりがあるオーディオファンには喜ばれる音質で、特にベースの質感はベルサイユ盤を上回っている。
アメリカ盤1stの黒ラベルでも4〜5千円、音質が殆ど変わらない2nd(正確には3rd、2ndは渦巻きラベルとなる)の赤紫ラベルで2〜3千円位で入手できるので機会があれば聞いてみてほしい。自分のオーディオが一皮むけたような錯覚に陥るそんな1枚である
*注:すべてモノラル盤の比較で3rdとなる赤緑のラベルやステレオ盤の音質は確認していない

BUD POWELL IN PARIS

オリジナル盤の基本は録音国で出荷された1stプレスである。ところが録音レコード会社が録音国以外ににあった場合はオリジナルの判断が難しい場合がある。
米・リプライズから出た『BUD POWELL IN PARIS』はアメリカ盤、フランス盤どちらがオリジナルだろう?(普通マスターテープがどこの国のレコード会社にあるのか?で決まるのだが・・・)実際にはアメリカ・リプライズ盤がオリジナルだと判断する人が多く、今まで中古屋でもアメリカ盤は4〜7千円、数は少ないがフランス盤は3〜4千円くらいで中古店のエサ箱で見てきたが、最近、あるお店で「本当のフランス・オリジナル盤」と書かれたプライスカードに数万円!最近のヨーロッパ盤ブームも反映してのことと思うが確かにアメリカ盤よりも輸入された数が少なく仕方がないとも思う。しかしその数日後に新宿ユニオンで同じフランス盤が3500円でエサ箱に・・・お店の考え一つでこんなにも値段が違う廃盤レコード。皆さんはどう思いますか?

肝心の音質であるが録音自体優秀録音ではないので音質でオリジナルを判断するのは困難かもしれない。フランス盤のピアノの質感はイマイチだがベースの質感は良く出ている。対するアメリカ盤はピアノの質感は良いが締まりのないベースがピアノに被るといった具合。これがアメリカ盤ステレオだと話は変わりベースがピアノに被ることなくピアノの質感を良く引き出している。60年代後半になると完全にジャズにおけるモノラル神話は崩れていくのを感じるが日本のコレクターの間では未だにモノラル神話がはびこっている

フランス盤のジャケットは通称ペラジャケで裏面は2色刷である。ラベルのデザインはUS盤と変わらないがヨーロッパ盤独特の溝がある

昔から安く入手できたので複数所有している。捜したのだがなぜか?モノラル盤はDJ盤しか見つからなかった。下はステレオ盤。共に溝はない

怪奇盤

珍盤、迷盤は多いが怪奇盤というのは殆どないのではないか?リバーサイドから発売された『BLUES FOR DRACULA』は正に怪奇盤で、ジャケットからして怪しげなドラキュラが楽しませてくれる。ジャズを知らない人には何のレコードかさっぱり判断が付かないと思う。このリバーサイドのレコードは雑誌でも珍盤?として紹介されることがあるが演奏内容については評価らしい評価はされない。しかし、なかなかどうしてグリフィンを初めとしてサイドメンバーがフィリーを好サポートしていて(いろいろなジャズの珍盤・奇盤があるが珍しく)好演奏だと思う。何しろ最初の出だし一曲目だけでそのドラキュラそのものの雰囲気に飲まれてしまうこのレコード、録音自体も優秀とまでいかないが、なかなか良い。このような雰囲気を持ったレコードこそステレオ盤で聴いたら、さぞかし素晴らしいと思うのに残念ながらステレオ盤では発売されなかった。
三大レーベルでもリバーサイドは一番手に入れやすく一部を除いては値段も安かった。このようなレコードも4〜6千円位でエサ箱に売れ残っていてカネのない時代、リバーサイドの音質が好きな僕としては大変に有り難い存在であった。現在中古レコード量販店ではバブル以前の値段に戻りつつあるが、逆にその値段じゃないと売れない時代に入っている。それを思うとバブル期自体の値段が怪奇といえよう。

J.R.MONTEROSE

クラシック・レコードの音質はカッティングエンジニアがオリジナル盤の音質を良く研究しているのではないか?と思うほど音質が似ている。知人宅で聴いたクラシックレコードのJ.R.MONTEROSEの印象が良かったので思わず購入してしまった。聴いてみてオリジナルの数万円が高いのか?クラシック・レコードが安いのか?音質だけでは値段に大きな差があることなど分からないだろう。ケチを付けようと思えば(良い意味でも悪い意味でも、どこかのオーディオ評論家のように)微細な部分を顕微鏡で拡大して幾らでも言えようが、それはコレクターの言い訳かもしれない。このような良質のレコードがこれからどんどん発売されるならばアナログ世界も捨てたものではないと思う。しかし現実にはいい加減な再発盤も多く、それを掴まされたアナログ初心者はアナログに失望することになる。大変に残念に思うが、このHPでは可能な限り良い再発盤を紹介して一人でも多くのアナログの魅力に触れて欲しいと思っている
音質だがゲインが若干オリジナルよりも低いが、音の厚みなど見事に再現されていると思う。ジャケについては現存するネガがない限りオリジナルジャケットからの複写になるのは仕方がないことで細かく書いても・・・しかしキャンディの時に書いたようにジャケにも神経を使い良くできていると思う。もしもバンゲルダーが現在の感性でカッティングしたらこのような音質になるかどうか疑問に思うのは間違いだろうか?

JAZZ & AUDIO

このHPのテーマそのままのタイトルである(笑)このレコードはアナログ全盛時代にたくさん出ていたオーディオ・チェック用レコードの1枚である。この頃はレコードからどれだけ情報を引き出せるか?腕の見せ所であり、ベテランと初心者の技術の差が大きく音質の良さに比例していた時代でヒマさえあればアームやカートリッジをいじっていた。そこで威力を発揮するのがチェック用レコードで自分の気に入った音質が出るまで再生したものだ。定番は雷や雨、朝の鳥たちの宴など自然の音を録音したチェックレコードで大手電気店でもこの種のレコードを出していて大変に楽しい時代であった。ちょうど世の中オーディオブームであり大手電機販売店にも高級な輸入品が所狭しと並べられ毎日のように秋葉原に通ったものである。雷の音を再生していたら姉があわてて洗濯物を取りに行ったなどチェックレコードには思い出がたくさん詰まっている。第一家電?だったかなカートリッジを購入したらチェックレコードが付いてきてとてもマニアックな録音ばかりで一時そればっかり聴いていた事があった。現在はどこかに行ってしまったが良くここまで音が入るなぁと感心したものだ。現在聴くとどう聞こえるのか?
しかし落雷やSLの汽笛がリアルな音が出てもよい音で音楽が聴けるとは限らないと知るにはずいぶん時間がかかったが・・・

さて45回転のこのチェックレコードは他のチェックレコードに比べて(落雷,SLの汽笛などの)録音などがないため?に面白味がないが親切に基本的なオーディオチェックが出来るように工夫されていてまじめに作られている。しかしさすがに当時評判のデンオンのデジタル、音質チェック以外のジャズの演奏はなかなか綺麗な音で入っている。この種のレコード、なにしろジャケ裏の説明がなかなか面白く、ここを聴いてコレをチェック!と書いてあると確かにそのように聞こえてしまう。自己感性(感情)で変わる音質など心理によって簡単に左右されてしまう。なにかオーディオ店で高価なケーブルの説明を聞いているみたいだ。「ほらっ 今、変わったでしょ!」

GIANT STEPS/JOHN COLTRANE

モダンジャズのスタンダード中のスタンダードのこの名盤。特別、珍しくもなくコルトレーンのコーナーには必ず置いてあるレコードである。しかしなぜか?昔からなかなか綺麗なオリジナルが出てこない。昔から値段はさほど高くはないが手元に置いておきたい1枚であるらしく捜す人も多かった。何しろ盤が傷に弱いアトランティックで、どうしてどうして完璧な盤を捜すとなると難しい1枚でもある。このレコード、昔から専門店以外に出たとの噂が多く、昔は1年に1回以上あそこで出た!ここで出た!と聞きそのレコード屋に(後の祭りなのに)通い続けることになった記憶がある。一番安く出た値段は2千円台でピカピカ!!当時大変に羨ましかったが、ジャズとは無縁のレコード屋で購入したことに驚き、そんなところまでレコード屋を回っているの?と感心?したり呆れかえったり。と言う僕もロック屋で大変貴重なレコードを見つけているが・・・人のことは言えないみたいだ。僕みたいなタイプは専門店で購入したレコードを見せられてもあまり羨ましいとは思わないが、一般中古店で格安で他人が手に入れるとそれがあまり珍しくもない盤でも非常に羨ましく思う。
音質の方であるが(オリジナル→赤/紫うずまきラベル→赤/紫と)再発盤でもスタンパーに変わりはないと記憶している。赤/紫になると2〜4千円位なので機会があれば購入してみるのも良いと思う。オリジナルに近い音質を楽しめるはずだ。このレコード、アトランティックの中ではまぁまぁの録音であるが、ステレオ盤となるとあまり良い音質ではなく手放した経験がある

僕だけだと思うがコルトレーンの「GIANT STEPS」を聞くと不思議と円熟したトミフラの「GIANT STEPS」も聴きたくなる。

おみやげ

僕の古い友人が地方のたまたま行ったレコード屋で見つけておみやげとして持ってきた。こういうおみやげなら僕は大歓迎だ。最近ふるい日本人ジャズに高価な値段が付いているがほんの数年前までエサ箱にあっても見向きもされなかったレコードが多く、タクト電気や東芝赤盤、キングペラジャケなどのレコードなども1000円前後でずいぶんと購入した。今は全く聞いていない。和製ジャズは一聴良いように聞こえるが熱さが感じられない演奏も多く、(中には素晴らしいのもあるが)どうしても聴く回数が少なくなる。

数ヶ月前にユニオンで和製ジャズの廃盤セールを行ったが一部を除いて殆ど動きはなかった。当然であると思う。前にも書いたが数年前まではエサ箱にあっても見向きもされないものが、今ではあんなレコードまでが数万円・・・と、安かったからこそ和製ジャズは面白かったのに、近頃、中古屋で見る高価な古い日本人ジャズには全く興味が無くなってしまった。東京のコレクターの間ではある業者が日本の古いジャズに目を付け価格を上げたとの噂が飛んでいるが、本当かどうかはわからない。しかし確実にここ数年で2流どころか3流の和製ジャズまで値上がりしたのは事実である

写真は10インチ東芝赤盤ペラジャケ、渡辺貞夫、宮沢昭など

マイ・ブーム

先述した(Vol.10)Alfredo Remusを数人に聞かすと皆『イイ!』といって出来れば音源をコピーさせてくれと頼まれた。(お世辞でもコピーをくれと言うのは初めてだ)やはり聴いた人が少ないのか?僕もこのようなレコードを今まで黙っていたのもコレクターの心理からかレコードが手に入らないうちはちょっと他人に教える気にならないのは判ってもらえると思う。
その他のアルゼンチンのAlfredo Remus(b)のレコードを捜していたら偶然1972年に録音されたレコードが手に入った。しかしこちらはジャズ・ロックで前回のと色合いが全く違う。ちょっと失敗かなぁと思いつつも聴いているうちにB面が何かピンク・フロイドの『原始心母』を思い出してしまうような完全にクロスオーバー・ミュージックで、僕自身は普段このようなレコードは聴かないのだがなかなか心地よい。このレコード自体、人さまにはあまりお勧め出来ないが、前回ご紹介した『The Best of Alfredo Remus』CDで復刻されないかなぁ?とちょっと期待している。機会があれば皆さんにお聞かせしたいアルバムである
実は先月オークションにAlfredo Remusが偶然出ていて知人がどうしても手に入れたいと代理で参加したが結局、落ちなかった。後日「あのHPに書かなければ絶対に落ちたはず」と言われて「そんなに僕のHPは読まれていないよ」と答えたが逃した魚は大きいらしい。僕の感性が正しいか?出来ることならば落とした人の感想をお聞きしたいと思っている

・・・・・ちょっとめずらしい?じゃず・レコード盤??? Vol.12に続く・・・・・